Yunaとは——ヒジャブのR&Bシンガーが、Usherと歌いビルボードに立つまで

マレーシア出身のシンガーソングライター、Yuna(ユナ、本名ユナリス・マット・ザライ)。ヒジャブ(イスラム教徒の女性がまとうヘッドスカーフ)を身につけたまま、米国のR&Bシーンで成功した稀有なアーティストだ。アッシャー(Usher)とのデュエット「Crush」は米ビルボードのAdult R&Bチャートで3位に達し、アジア出身の歌手として初めてBETアワードにノミネートされた。クアラルンプールのカフェで歌っていた女性が、どうやって世界の舞台へたどり着いたのかを整理する。

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アッシャーとのデュエット「Crush」が記録した米ビルボードAdult R&Bの最高位
目次

クアラルンプールのカフェから

Yunaは1986年、マレーシア北部のケダ州に生まれた。14歳で作詞を始め、独学でギターを覚える。法学部に通いながら、クアラルンプールのカフェやライブハウスで歌い始めた。SNSに自作の曲を投稿すると、瞬く間にマレーシア国内で注目を集める。

2008年にデビューEPを発表すると、マレーシアの音楽賞で5部門にノミネートされた。翌年以降は、マレーシアのグラミー賞とも呼ばれる賞を相次いで受賞し、国内のトップアーティストの座をつかむ。だが彼女の視線は、すでに国の外へ向いていた。

ファレル・ウィリアムスが見出した全米デビュー

転機は2011年に訪れた。Yunaは米国のレーベルと契約し、シングル「Live Your Life」で全米デビューを果たす。この曲をプロデュースしたのが、グラミー賞の常連、ファレル・ウィリアムスだった。世界的なヒットメーカーが、マレーシアの無名に近いシンガーの才能を見抜いた。

2012年には国際デビューアルバム『Yuna』を発表し、ビルボードの新人チャートで19位を記録する。ポップ、フォーク、R&B、ジャズを溶け合わせた音楽性と、ヒジャブをまとった独特の存在感が、米国の音楽シーンで少しずつ知られていった。

📌 キーポイント:マレーシアの音楽賞(AIM)とは
Anugerah Industri Muzik(AIM)は、マレーシアの音楽業界の賞。「マレーシアのグラミー賞」と呼ばれる。Yunaは2009年以降この賞を複数受賞し、国内のトップアーティストになったうえで米国へ進出した。

アッシャーと歌った「Crush」

Yunaの名を決定づけたのが、2016年のアルバム『Chapters』だ。このアルバムには、R&Bのスーパースター、アッシャーや、ジェネイ・アイコが参加した。中でもアッシャーとのデュエット「Crush」は、米ビルボードのAdult R&Bチャートで3位まで上昇した。

2017年、Yunaはこの「Crush」で、アジア出身の歌手として初めてBETアワード(米国の黒人音楽・文化を称える賞)にノミネートされた。『Chapters』は、ローリング・ストーン誌が選ぶその年のベストR&Bアルバムの候補にも挙がった。マレーシアのカフェで歌っていた女性が、米国R&Bの中心で評価される存在になった。

5部門
母国の音楽賞ノミネート
(2008年デビュー作)
19
国際デビューアルバムの
ビルボード新人チャート
アジア出身歌手として
初のBETノミネート

ヒジャブ×R&Bが示すもの

Yunaの特異性は、信仰のしるしのヒジャブを外すことなく、米国のR&Bシーンで受け入れられた点にある。マレーシアは多民族・多宗教の国で、Yunaはマレー系のイスラム教徒だ。そのアイデンティティを隠さずにグローバル市場へ出ていったことは、マレーシアの多文化が生んだソフトパワーの一例といえる。

インドネシアのNIKI、フィリピンのBINIと同じく、Yunaも東南アジア発のアーティストが世界市場へ出ていく流れの中にいる。加えてYunaは、世界に十数億人いるとされるムスリム市場と、欧米のメインストリーム市場をつなぐ稀有な存在でもある。肌の露出を抑えた「モデスト・ファッション」のアイコンとしても知られ、音楽を超えてファッションの分野でも影響力を持つ。

Yunaの代表曲は、それぞれ詳しく解説している。アッシャーと歌った「Crush」と、全米デビュー曲「Live Your Life」もあわせて読んでほしい。

日本企業・ビジネスパーソンが意識すべき3つのポイント

1. 東南アジア発アーティストの世界進出が続いている。 BINI(フィリピン)、NIKI(インドネシア)に続き、Yunaもマレーシアから世界へ出た一人だ。日本のコンテンツ産業にとっても、アジア発の才能が欧米市場で主役になれることを示す材料になる。

2. イスラム圏とグローバル市場の橋渡し。 Yunaは、世界に十数億人いるムスリム市場と、欧米のメインストリーム市場をつなぐ存在だ。モデスト・ファッションをはじめ、ムスリム消費者に届く商品・ブランドを考える企業にとって、参考になる成功例といえる。

3. マレーシアの多文化はソフトパワーになる。 多民族・多宗教という複雑さは、見方を変えれば多様な才能の供給源だ。現地でブランドを展開する企業は、この多文化をどう捉えるかが、共感を得られるかどうかの分かれ目になる。

出典:Wikipedia(Yuna / Crush)、PBS、各音楽メディアをもとに整理。

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