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BYDがタイでホンダを超えた — ASEAN EV市場を中国勢が席巻、日系メーカーの反撃は

3月25日に開幕したバンコクモーターショーで、ASEAN自動車市場の勢力図の変化が鮮明になった。Nikkei Asiaによると、原油高を背景にEV(電気自動車)への需要が急増。中国のBYDとベトナムのVinFastが「EVの虎」として市場を席巻している。ASEAN EV市場で中国メーカーのシェアは70%を超え、タイでは85%に達する。日系メーカーがガソリン車で築いた「牙城」が、急速に崩れつつある。

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BYDがタイでホンダを超えた

変化の速さを象徴するのが、タイでのBYDの躍進だ。BYDは2025年上期にタイで24,072台を販売し、前年同期比64%増。タイの自動車ブランドとしてホンダを抜き、トヨタに次ぐ第2位に浮上した。シェアは11.9%に達している。

なぜBYDはこれほど急速に伸びたのか。第一に、タイ政府のEV優遇策(EV3.0/3.5)がある。購入補助金や税制優遇により、消費者のEV購入ハードルが下がった。第二に、BYDは2024年7月にタイ東部のラヨーン県に年産15万台の工場を稼働させた。現地生産により価格競争力が一段と高まった。第三に、原油価格の高騰だ。中東紛争の影響でガソリン価格が上がり、「燃料代がかからないEV」の魅力が増している。

この3つの要因が重なり、タイのEV販売に占める中国メーカーのシェアは85%に達している。BYDだけでEV販売の約半分を占める状況だ。

📌 キーポイント:なぜ中国EVメーカーがASEANで強いのか
中国のEVメーカー(BYD、長城汽車、哪吒汽車等)がASEANで急成長している理由は3つあります。(1) 中国国内での激しい価格競争で鍛えられた低コスト生産技術、(2) バッテリーからモーターまでの垂直統合(BYDは自社でバッテリーを製造)、(3) ASEAN各国の政府補助金を活用した積極的な現地工場投資です。日系メーカーがエンジン技術で築いた優位性が、EVでは通用しにくい構造になっています。

インドネシアとフィリピンでも攻勢が加速

タイだけではない。BYDはインドネシアでも10億ドルを投じて年産15万台の工場を建設し、2025年末に稼働を開始した。インドネシアは世界最大のニッケル生産国であり、EVバッテリーの原料を現地調達できる強みがある。BYDはこのサプライチェーン上の優位性を活かし、インドネシアをASEAN向けEV輸出のハブに育てようとしている。

VinFast(ベトナム)もインドネシアへの輸出を拡大しており、同社の海外輸出の44%がインドネシア向けだ。マレーシア向けが22%で続く。ベトナム発のEVメーカーがASEAN域内で存在感を高めている。

フィリピンでは、トヨタが3月に初のBEV(バッテリー式電気自動車)「アーバンクルーザー」を発売した。価格は213万5,000ペソ(約570万円)。航続距離475km、壁掛け充電器を無料で付属する。NNAによると、トヨタ・フィリピンは「チーム・サンキュー」と名付けた従業員定着プログラムも導入しており、人材確保と合わせてEVシフトを進めている。

ASEAN EV市場のシェア構造

日系メーカーは巻き返せるのか

日系自動車メーカーにとって、ASEANは「最後の牙城」だった。タイにはトヨタ、ホンダ、日産、三菱など主要メーカーの工場が集積し、インドネシアではダイハツ(トヨタ傘下)がシェアトップを維持してきた。しかしEVへの移行が進めば、エンジン技術という日系最大の優位性が意味を持たなくなる。

日系メーカーの対応は始まっている。トヨタはフィリピンでアーバンクルーザーを投入し、タイではbZ4X、インドネシアではイノーバのHEV(ハイブリッド)を展開。ホンダもe:N1をタイで販売している。しかし投入モデル数、価格帯、現地生産体制のいずれにおいても、BYDの攻勢に対して後手に回っている印象は否めない。

NNAが報じたように、タイでは中東紛争によるEV優遇策(EV3.0)の終了後も中国メーカーが新型車を次々投入し、需要を喚起している。日系メーカーが「ガソリン車の延長線」としてのハイブリッド戦略を維持するのか、BEV(完全電動車)に本格シフトするのか。その判断が、ASEANでの今後10年の勝敗を決める。

日本企業・ビジネスパーソンが意識すべき3つのポイント

1. ASEANの自動車市場はEVシフトの「不可逆点」を超えつつある。タイでBYDがホンダを抜いたという事実は、ブランドロイヤリティだけでは中国メーカーに対抗できないことを示している。自動車部品メーカーを含むサプライチェーン全体で、EV対応の投資判断が急務だ。

2. 中国メーカーの「現地生産+低価格」戦略は、日系メーカーのコスト構造では模倣が難しい。BYDはバッテリーを自社生産しているため、他社より低コストでEVを作れる。日系メーカーが同じ価格帯で競争するには、バッテリー調達戦略の根本的な見直しが必要だ。

3. フィリピン・インドネシアは「まだ間に合う」市場。タイのEV普及率に比べ、フィリピンとインドネシアはまだ初期段階にある。トヨタのアーバンクルーザー投入はその象徴だ。充電インフラの整備と合わせて早期に動けば、日系メーカーにもシェア確保の余地がある。ただし、BYDがインドネシア工場を稼働させた今、時間的余裕は限られている。

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