インドネシア・ジャカルタ出身のシンガーソングライター、NIKI(ニキ、本名ニコール・ゼファニャ)。15歳でテイラー・スウィフトの前座を務め、いまや米国を拠点に世界をまわるアーティストになった。マーベル映画『シャン・チー』の主題歌「Every Summertime」で広く知られ、Spotifyの累計再生は2025年時点で50億回を超える。これはインドネシア人アーティストとして最多だ。彼女がどうやってジャカルタの自室から世界の舞台へたどり着いたのか、その背後にあるアジア系音楽の世界進出という流れまでを整理する。
ジャカルタの自室からYouTubeへ
NIKIは1999年、ジャカルタに生まれた。9歳でギターを手にし、独学で作曲を覚える。2014年、自作の曲をYouTubeに投稿し始めると、すぐに数万人のフォロワーを集めた。同じ年、コンテストに勝って15歳でテイラー・スウィフトのワールドツアー「The Red Tour」の前座に立つ。世界的スターの巨大なステージを、10代半ばのインドネシア人の少女が経験した。
18歳で米テネシー州ナッシュビルの大学に進学し、音楽を学ぶ。活動の拠点を米国へ移したことが、その後の飛躍につながった。生まれ育ったインドネシアの感性と、米国の音楽産業の真ん中という環境が、彼女の中で結びついた。
88risingが開いた、世界への扉
NIKIの名を世界に広げたのが、米国のレーベル「88rising(エイティーエイト・ライジング)」だ。2015年に創業されたこの会社は、アジア系のアーティストを欧米の音楽市場へ送り出すことを掲げる。単なるレコード会社ではなく、マネジメント、映像制作、マーケティングを一体にした新しい形の音楽企業だ。
それまで欧米の音楽シーンで、アジア系アーティストは目立つ存在ではなかった。88risingは、その状況を変えることを狙った。NIKIや、同じインドネシア出身のラッパー、リッチ・ブライアン(Rich Brian)を抱え、アジア発の才能を次々と世界へ押し出していった。
2015年に米国で創業された、アジア系アーティスト専門の音楽企業。レコードレーベル・マネジメント・映像制作・マーケティングを一体で手がける。NIKIやリッチ・ブライアンを抱え、フェス「Head in the Clouds」を世界各地で開催。アジアの才能を欧米市場へ送り出す役割を担う。
「Every Summertime」が映画とともに世界へ
NIKIのキャリアを決定づけたのが、2021年のマーベル映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の主題歌「Every Summertime」だ。この曲は米国レコード協会からゴールド認定(50万枚相当)を受けた。NIKIは、米国でゴールド認定を受けた初のインドネシア人女性となった。
2022年4月には、リッチ・ブライアンとともに米国の大型フェス「コーチェラ」に出演する。インドネシア人アーティストとして初の快挙だった。その後もワールドツアーで17か国を回り、世界的なアーティストとしての地位を固めている。15歳でテイラー・スウィフトの前座に立った少女は、10年で自ら世界をまわる側になった。
NIKIの代表曲は、それぞれ一本の記事で背景を掘り下げている。「Every Summertimeはマーベル映画から生まれた」と「High School in Jakartaが描くジャカルタの高校時代」もあわせて読んでほしい。
前座に立った年齢
回った国
認定(米国)
「最も聴かれたインドネシア人」が示すもの
NIKIのSpotify累計再生は2025年時点で50億回を超え、インドネシア人アーティストとして最多だ。これは一人の成功にとどまらない。インドネシアの音楽が、世界の市場に届くようになったことを示している。
88risingが主催する音楽フェス「Head in the Clouds」は、ロサンゼルスで始まり、いまではジャカルタやマニラでも開かれる。ローリング・ストーン誌は、これを「アジアのコーチェラ」と呼ぶ。アジア発のポップカルチャーが、欧米から一方的に消費されるだけの存在から、自ら市場を作る側へと動き始めている。NIKIは、その流れの最前線にいる一人だ。
日本企業・ビジネスパーソンが意識すべき3つのポイント
1. アジア発コンテンツが世界市場を取りに行く時代。 NIKIや88risingは、アジアの才能が欧米で主役になれることを証明した。日本のコンテンツ産業にとっても、世界市場への出し方という点で示唆がある。
2. インドネシアは若い才能の供給源。 人口約2.8億人のインドネシアでは、音楽だけでなく映像・ゲーム・デジタルコンテンツの分野でも、世界に通用する人材が育っている。進出やパートナー探しの視点で見る価値がある。
3. 文化は市場参入の入口になる。 インドネシアの若い世代が何に共感し、何を消費するか——その手がかりが、こうしたアーティストの広がり方に表れている。現地ビジネスを考えるうえでのヒントになる。
出典:Wikipedia、Billboard、GRAMMY.com、Kompas ほか各社報道をもとに整理。再生回数は変動するため、本文の数値は記載の時点のものとして扱う。

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