インドネシアの外部委託が5業務に絞られた——4月30日施行の省令第7号と、日系工場が2028年までに済ませる棚卸し

インドネシア労働省は2026年4月30日、外部委託(アウトソーシング)を大幅に制限する省令第7号を施行した。委託可能な業務は5つに限定され、それ以外は原則として自前で抱えるか、契約形態を見直す必要がある。猶予期限は2028年4月30日。インドネシアに工場を持つ日系製造業にとっては、この2年で人員体制を組み直す作業が始まったことを意味する。

規制が施行された春は、製造業のコスト環境も同時に揺れている。ルピアは1ドル=17,500台で推移し(関連記事)、外貨準備高も2年ぶりの低水準にある(関連記事)。S&Pグローバルが5月5日に発表した4月のインドネシア製造業PMIは49.1で、拡大と収縮の分岐点である50を下回った。コストと需要が同時に揺れる中で、外部委託規制が労務面に追加の構造変化を加えた格好だ。

目次

何が変わったのか——委託可能な5業務

労働省令第7号は、外部委託(インドネシア語でAlih Daya)の対象業務を「補助的業務」に限定し、ポジティブリスト方式に切り替えた。リスト方式とは、許可される業務を明示的に列挙し、それ以外は原則禁止とする規制手法を指す。

ポジティブリストに掲載された5業務は以下の通りだ。

  1. 清掃業務(クリーニング)
  2. 警備業務(セキュリティ)
  3. 飲食サービス(社員食堂の運営)
  4. 輸送・ドライバー業務
  5. 石油・ガス・電気分野の補助業務

これ以外の業務を外部委託で運営している企業は、原則として2028年4月30日までに見直しを完了する必要がある。

労働省令第7号 外部委託制限の図解

製造ラインに入る派遣要員は対象外——日系工場への直接的影響

ここまでの5業務リストを見て、インドネシアで工場を運営する日系企業がまず気付くのは、製造ラインに入る補助要員・ライン作業員が含まれていない点だ。

インドネシアの製造業ではこれまで、人材派遣会社経由でライン作業員を確保する運用が広く見られた。短期的な需要変動への対応や、繁忙期の増員・閑散期の減員を柔軟に行うために重宝されてきた仕組みだ。ところが省令第7号では、製造ラインへの直接投入はポジティブリストの5業務には該当しないと整理されており、原則として委託不可となる。

📌 キーポイント:インドネシアの外部委託(Alih Daya / Outsourcing)とは
インドネシア語で「アリ・ダヤ」と呼ばれる、人材派遣・業務委託の総称。製造業ではこれまで、ライン作業員・梱包要員・倉庫作業員などを人材派遣会社経由で確保する運用が一般的だった。短期的な需要変動への対応や繁閑差の調整に重宝されてきたが、労働者保護の観点から段階的に規制が強化されてきた。2003年労働法・2020年雇用創出オムニバス法に続き、2026年4月の省令第7号で再び範囲が大きく絞られた。

委託先企業に対する義務も強化された。委託先は、賃金・残業代・有給・社会保障・退職金等の全法定権利を保障する義務を負う。表面上は「委託先の責任」だが、実質的には委託元(工場)が委託料を通じてその運営コストを負担することになるため、外部委託の経済合理性そのものが低下する。

違反時の制裁と猶予期間内のロードマップ

省令は段階的な制裁制度を定めている。違反企業には、書面警告から始まり、是正されない場合は事業停止、最終的には操業許可の取り消しまで段階的に制裁が課される。猶予期間(2028年4月30日まで)が設けられているのは、この期間内に既存の委託契約を全面的に見直すことを各社に求めるためだ。

実務的な対応の流れは次のように整理できる。

  1. 現状把握:工場内のどの業務に外部委託を使っているかを業務単位で棚卸しする。製造ラインのライン作業員だけでなく、梱包・検査・倉庫内作業・受入検品なども含めて確認する。
  2. 分類:棚卸しした業務をポジティブリストの5業務(清掃・警備・飲食・輸送・エネルギー補助)に該当するかどうかで仕分ける。
  3. 対応策の選択:5業務に該当しない業務については、直接雇用への切り替え、業務プロセス見直しによる人員削減、自動化投資の3つから選択する。
  4. 法務確認:委託契約の文言・委託先の労務管理状況を再点検し、新省令の要件を満たすかを確認する。
  5. 実行:2028年4月の期限から逆算し、契約変更・採用切り替え・自動化投資のスケジュールを引く。

猶予期間は2年あるが、特に直接雇用への切り替えを伴う場合は、採用・教育・労使協議に時間がかかる。「2028年に動けばよい」という認識ではすでに遅い局面に入っている。

製造業駐在員が今月確認すべき3つのポイント

  1. 工場内の外部委託業務を業務単位で棚卸しする。製造ライン補助・倉庫内作業・梱包・検査など、これまで人材派遣で運用してきた業務がポジティブリスト5業務に該当するかを、業務名単位で一覧化する。これが全ての出発点となる。担当部門が明確でない場合は、人事・製造・購買が共同で着手する形が現実的だ。
  2. 直接雇用への切り替えコストを試算する。委託していた人員を直接雇用に切り替える場合、月額人件費に加えて社会保障(BPJS)・退職金積立・有給手当などのフルコストが乗る。委託料との差分を業務単位で計算し、コスト影響を経営層に報告できる形に整える。試算結果次第では、自動化投資や業務プロセス見直しの方が合理的になるケースもある。
  3. 法務部門との連携体制を年内に整える。猶予期間は2028年4月までだが、契約見直し・労務体制の整備・自動化投資の意思決定にはそれぞれ準備期間が必要だ。法務・人事・製造の3部門が連携して進めるプロジェクト体制を年内に立ち上げ、月次でロードマップを進捗管理する形が望ましい。

参照ソース:Antara News(2026年4月30日)AHP Law Firm 解説(2026年5月)Mondaq(2026年5月)VOI Indonesia(2026年5月5日 PMI解説)

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