フィリピンに家族で住む駐在員にとって、2026年5月は暮らしの様々な側面で変化が同時に動いた月になった。マヨン火山のアラートレベル3が継続し19万5,000人が避難する一方、4月のインフレ率は前年同月比7.2%に跳ね上がった。マニラ首都圏のMeralco(電力会社)は累積141.7億ペソの還付で電気代が実質値下げに転じ、PAGASA(フィリピン気象庁)は体感温度44度の猛暑に「熱中症危険」レベルの警告を出した。これらは駐在員家族の家計と日々の判断に直結する4つの変化だ。整理して家族で共有しておきたい。
① マヨン火山アラートレベル3、ビコール地方19.5万人が避難
5月2日の大規模噴火以降、フィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)はマヨン火山にアラートレベル3(5段階中3)を継続している。火砕流は最大5キロまで到達、アルバイ州一帯で広範な降灰が発生した。5万2,590家族・約19万5,000人が避難所生活に入っており、学校132校が降灰被害、24教室が避難所に転用されている。教育省(DepEd)は学校清掃・復旧費用として375万ペソを緊急放出した。
マニラ首都圏やセブから直接の生活影響はないが、ビコール地方への家族旅行(レガスピ、アルバイ州)は当面控える判断が現実的だ。代替先としては、セブ・ボホール・パラワン方面が安全で、5〜6月の家族旅行ピーク期にも対応しやすい。マヨンは「数週間にわたり活発な状態が続く可能性」とPHIVOLCSが発表しており、5月後半〜6月のスケジュールにも影響する可能性がある。
② 4月のインフレ率7.2%——米価+13.7%と現地スタッフへの影響
フィリピン統計庁(PSA)が5月5日に発表した4月のCPIは前年同月比7.2%上昇で、3月の4.1%から大きく加速した。市場予想(5.5%)と中央銀行(BSP)の予想レンジ(5.6〜6.4%)を上回るサプライズだ。最大の押し上げ要因は米価で、前月比3.5%だった上昇率が13.7%まで急騰した。マニラ首都圏の小売価格は普通米42.50ペソ/kg、上質米48ペソ/kg、プレミアム米58.87ペソ/kg。食品全体では前月の2.7%から6.1%へ倍以上の上昇となった。
低所得世帯の体感物価は8.5%とさらに重く、基礎食料品ウェイトの高さが響いている。これは駐在員家族が雇うハウスキーパー、運転手、ベビーシッターの生活に直撃する。5〜6月にかけて昇給要望が出やすい時期で、家族側の家計簿の見直しと現地スタッフ給与の見直しを同時並行で進めるのが現実的だ。マルコス大統領は5月5日に米価引き下げを指示しているが、効果が出るには数週間から数か月かかると見られる。
前月比
(Meralco累積)
(13地点)
③ Meralco電気料金、5月から累積141.7億ペソの還付で実質値下げ
マニラ首都圏の電力会社Meralcoは、エネルギー規制委員会(ERC)が承認した累積141.7億ペソの還付を5月から本格化させる。平均0.25ペソ/kWhの還付で、年初からの1.40ペソ/kWh上昇分の一部を相殺する。住宅向け追加調整0.22ペソ/kWhも加わり、月額負担は実質的に下がる見込みだ。
5月はエアコン稼働の増える月で、世帯の電力消費は通常20〜33%増加する。還付がちょうどそのタイミングに重なるため、家計の体感は改善する。コンドミニアムにお住まいの駐在員家族は、5月分の請求書で還付額を確認しておきたい。一方、ペソ安によるドル建て発電コスト増、夏場のエアコン稼働増は依然として圧力で、9月以降の電気代がどこまで下がるかは別の話となる。
ガソリンが+2.21ペソ/L、ディーゼルが+2.66ペソ/Lの調整となり、4月までの連続値下げ局面は終了した。背景はペソ安(対ドル61.57ペソの過去最安値)と、ホルムズ海峡近辺での船舶攻撃懸念。学校送迎・週末ドライブの燃料コストは引き続き高止まりの想定で、家族のお出かけ計画に織り込んでおく必要がある。
④ 体感44度の猛暑、お子様の屋外活動は時間帯を限定
PAGASAの観測では、5月初旬にパンガシナン州ダグパン市で予想体感温度44度を記録した。ラオアグ、バタック、シナイト、バクノタン、アパリ、ビラックなど13地点で42〜43度に達し、熱けいれん・熱疲労・熱中症のリスクが「危険」レベルに分類されている。マニラ首都圏でも最高気温36〜38度が続いており、体感温度はさらに高い。
PAGASAは午前10時から午後4時の屋外活動制限を推奨している。お子様の学校送迎、週末プール・公園遊びは、早朝(午前7〜10時)か日没後(午後5時以降)にずらすのが安全だ。同時に、気温上昇でデング熱の蚊の活動も活発化しており、虫除けスプレー、長袖・長ズボン、就寝時の蚊帳を家族共用で常備しておきたい。
新学期は6月8日からスタート——SHSカリキュラム刷新
2026〜2027年度の新学期は2026年6月8日(月)から始まる。フィリピンの学校年は近年8月開始だったが、2026年度から従来の6月開始に回帰する。お子様が現地校・インター校に通う家族にとって、夏休みのタイミングが変わる重要な変更だ。
同時に、上級中等教育(SHS、Senior High School、日本の高校2〜3年相当)のカリキュラムが大幅刷新される。トラックは従来4種類から「アカデミック」「テクニカル・プロフェッショナル」の2種類に集約。コア科目は15科目から5科目に削減され、残りは選択クラスター(STEM、芸術、ビジネス、技術系)で柔軟化される。11年生(日本の高校2年相当)で専門訓練が増強される。3学期制(トライメスター)の試行も並行している。
インター校学費の参考相場は、ISM(International School Manila)で小学校が年間USD14,700+PHP465,600、ハイスクール上位学年でUSD19,080+PHP605,600。Nord Anglia Manilaは入学金だけでPHP231,530。日本の私立校と比較すると2〜3倍の水準だが、英語環境と国際バカロレア(IB)対応校の選択肢は多い。駐在期間と進学計画次第で、現地校・インター校・帰国準備校の組み合わせを再検討する価値がある。
5月後半〜6月の家族旅行は早めの予約を
NAIA(マニラ・ニノイアキノ国際空港)は2026年中に新ターミナル4が開業予定だ。サンミゲル(SMC)が運営権を獲得して以降、椅子11,820脚追加、ベビーカー・荷物カート2,500台、空調21基、Wi-Fi 10G化など改善が進んでいる。入国審査e-gate(生体認証)60基も12月までに稼働予定で、出入国の待ち時間が大幅に短縮される。NAIAX新ランプ開通でターミナル3まで「ほぼ1時間」が「数分」になるなど、家族の一時帰国・地方旅行の体験が変わる。
家族旅行のピーク期は5月後半〜6月中旬。学校休暇とボラカイの天候安定期が重なる。マニラ→セブ、マニラ→ボラカイ・パラワン直行便が増便しており、複数都市の家族旅行プランも組みやすい。マヨン噴火の影響でアルバイ・レガスピ方面は当面回避し、セブ・ボホール・パラワン方面に振り替えると無難だ。新学期6月8日開始のため、家族旅行は5月中に終わらせるか、6月第1週までに収めるのが現実的なスケジュール感となる。
家族で共有しておきたい3つのポイント
第一に、マヨン火山のアラートレベル3継続を踏まえ、ビコール地方(レガスピ、アルバイ州)への家族旅行は当面控える判断が現実的だ。代わりにセブ・ボホール・パラワンに振り替えれば、5〜6月のピーク期も無理なく過ごせる。火山活動は数週間にわたって続く可能性があるため、家族のスケジュールに織り込んでおく。
第二に、4月のインフレ率7.2%は家族の家計とハウスキーパー・運転手・ベビーシッターの生活双方に直撃する。家計簿の見直しと現地スタッフの昇給対応を5月中に話し合っておきたい。米価+13.7%は基礎食料品の体感値上げを引き起こしているため、現地スタッフが先に切り出してくる前に、こちらから話題を持ち出す方が関係維持にも効く。
第三に、お子様の安全と新学期準備を5月中に整える。猛暑44度の中での屋外活動制限、デング熱予防の蚊対策、6月8日新学期開始のスケジュール、SHSカリキュラム刷新(中高生のお子様)の情報共有が、5月後半に押さえておきたい家族の話題になる。インター校学費の年度更新通知が届く時期でもあるため、駐在期間と進学計画を奥様と再確認しておくのが望ましい。

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